キャッシュレス社会が意味するもの

■現金決済の終焉?

資本主義の国々では今、私たちがこれまで慣れ親しんできた現金を握りしめてモノを買う生活が終焉を迎えようとしています。

昨年1月にデンマークが、新規に紙幣、通貨を造ることを廃止し、スウェーデンでは、現金決済お断りが法律として認められオーストラリアでも1万オーストラリアドルを超える現金取引は違法とする政府方針が決まる(2019年7月1日より開始予定)などキャッシュレス決済は当たり前になっています。

お金が私たちの財布から姿を消し、その代わりにカードやスマホで支払いを済ませる社会の到来は、インターネットとICT技術の進化がもたらした経済的超合理的社会を誕生させました。

私たちは、この恩恵に授かり、あらゆる購買シーンで無駄な時間と労力を省く快適な生活を手に入れつつあります。
また、欧米でのチップ社会や日本であれば割り勘支払いなどの慣習といった文化についても、文化圏ごとにキャッシュレス化に対応した新しい手段が登場するでしょう。
例えば、中国では、入金先のQRコードが書かれたプラカードを持って物乞いをするホームレスが普通に見られます。

少額のキャシュのやり取りについても、P2Pの個人間決済サービスなどが登場し、チップや割り勘からこどものお小遣いに至るまでキャシュレスで行われている国もあります。

■キャシュレス社会は、必須?

それでは、なぜキャッシュレス社会が世界で広まることになったのでしょうか?

移民がらみの問題で治安の悪化という社会情勢の中、現金強奪事件から回避する方法としてキャッシュレス社会が急速に進んだスウェーデンや現金流通の維持コストを解消するため、お金自体を作らなくなったデンマーク、高額紙幣が2種類も使用禁止になったため国民自身がキャッシュレスに移行せざるを得なくなったインド、クレジットカード決済利用で国が税制優遇することによって急速に国民がキャッシュレス決済を行うようになった韓国、偽札と導入コストが極めて低いQRコード決済の登場で一気にキャッシュレス社会になった中国などその理由は、その国々によって様々だと思います。

キャッシュレス社会が必要な表向きの理由

しかしながら、各国がキャッシュレス社会に移行しなければならない共通した理由もあるように思います。
一般に言われている共通した理由は、経済性、利便性、安全性、透明性の向上です。

私たちがよく使っているATMでは、時間帯によって108円からの手数料を取られますが、機械がすべてやっているのに何故、お金を取られるのか。。。と思ったことはありませんか?

私もATMを利用する度によくそのように思いますが、蓋を開けてみれば、実は現金をATMで取引するための年間コストは約2兆円だそうで(日経新聞)、私のよく利用する新生銀行でも、この10月からATMの引き出し手数料が一律108円になりました。

現金の運用は、思いのほかコストが嵩んでいるですね。

キャシュレス社会になれば、このコストが丸々浮きます。

それに加えて、ATMで通帳記帳をジージーやっている人や振り込みを何回もポチポチやっている人がいると、ATMの前には行列ができて時間ばかり経ってしまいますが、キャシュレス社会になるとこのようなことも無くなります。

また、銀行と言えば午後3時に窓口シャッターを降ろして、ひたすらお金を勘定し、1円でも勘定が合わなかった場合、何時間でも合うまで残業するといった、なんとも超アナログな仕事にお金がかかっていたという状況もコンピューターがリアルタイムに勘定処理を行うキャシュレス社会では無くなるでしょう。

安全面についても、銀行に行ってもお店に行っても現金がほとんど無いので、現金強盗がなくなり、現金目当ての引ったくりなども無くなる安全な社会もキャシュレス化で実現します。

そして、キャッシュレス社会では取引決済の一部始終をサーバーのデータベースにデータとして保存されるので、お金の流れが明白になり脱税やマネーロンダリングといった反社会色の強い行為が不可能になります。

キャシュレス社会が必要な裏事情

これだけでも、世界がキャッシュレス社会に向かう理由としては十分だとは思うのですが、実はこれらの理由よりもさらに大きな理由があります

それは、キャッシュレス社会を実現することによって、全世界の人々が”いつ、だれが、どこで、何にキャッシュを消費したか?”という個人データをビッグデータに蓄積し続けることにより、企業はそのデータを絶えず分析し新しいサービスを創出し続ける必要があるからです。

ネットのサービスは、便利で合理的なメリットを多く得ることができますが、生もののようなところがあります。

■まとめ

様々な技術のサイクルが極めて短い周期で変化する現代社会においては、ネット上の顧客は飽きやすく、目移りしやすいという特性に加え、常に変化しつつ多様化している顧客ニーズの中で、どのような新しいニーズがプロフィットを生む市場なのかを探索し続けなければ企業が生き残れないという宿命があります

それは、人々が”いつ”、”どこで”、”どこから”、”どれだけ”の収入を獲得し、”いつ”、”どこで”、”何に”、”いくら”使ったかという支出を1円単位で国や企業が把握することが可能になった社会の到来を意味します。

少し前に話題になった個人情報保護法なんて吹き飛びそうな話です。

国や企業は、このシステムで完璧な税金徴収に加え、国民一人一人の詳細な属性、信用から趣味、嗜好といったパーソナルな部分まで個人情報をビッグデータに蓄積し、近い将来AIがこのデータを活用して新しいサービスを提供していくという映画のような社会が現実になる日もそう遠くない気がします。

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